わが子の後見人になるということ

知的障害のある子の親として、歳を重ねるとともに徐々に不安と悩みが大きくなるものの一つに成年後見制度があります。育成会の会員定例会でも度々研修会や話し合いを重ねてきましたが、いま一つ具体的かつ現実的に捉えることが出来ずにきたように思います。しかし長崎市育成会の会員さんでご自分がお嬢様の後見人となられた方がいらっしゃるとの情報を聞き、ご自身の体験談や成年後見人になられた経緯を定例会でお話しいただけないかとお願いしたところ快諾いただき今回の定例会の実施となりました。

当日は会員の皆さんの関心の高さを物語るように、いつもの定例会より多くの方にご参加いただきました。昨年ご主人を亡くされた後、不動産の相続手続き時にお嬢さんに後見人を付ける必要にせまられたそうです。当初は第三者(司法書士や弁護士などの専門家)に依頼する方向で進められていたものの、相談された弁護士からお母様ご自身が後見人となるよう提案され、諸々の手続きを経て家庭裁判所に後見人として選定されたそうです。一見ハードルが高そうに思える後見人としての業務も、財産管理や報告書の提出等はあるものの、特別な事ではなく親が普段行っている子どもの金銭管理や身上監護など日常生活の延長に過ぎないとのお話に少し肩の力が抜けた気がしました。また、慌てて申請しなくても必要に迫られてからでも十分遅くないとのお話に参加された皆さんも安堵の表情を見せられてました。大変分かりやすく、また細かいところも具体的にお話しいただき参加者の皆さんも満足してお帰りになりました。

知的障害がある人が成年後見制度を利用する際、多くの課題があり今後民法改正の動きもあると聞きます。しかし後見人を付けざるを得なくなった場合でも、今回のように具体的な事例やお話をお聞きすることができ、親の会としての利点を再認識することが出来ました。

次回の定例会は11月24日(木)10:00~育成会大橋事務所にて市民後見の会ながさきから講師の方をお招きし、市民後見人として業務に当たられている方にお話をお聞きします。是非この機会に参加されてみませんか?皆様のご参加お待ちしております。         ( Saya)

 

「親心の記録」第2章ついに完成!

4月から会員定例会の中で始めた支援者の方々に向けた「親心の記録」の記入ですが、めでたく最終回を迎えました。今回は『親として支援する方に伝えたいこと』という自由記述のページと『子どもの健康、その後の対応』というページを記入しました。

みなさん悩みながらも記入し、『支援者に伝えたいことと』としては「自分の意思でいろんなことができるように促して」「コミュニケーションがうまくできないので、みんなと仲良くできるよう支援して」「本人が納得できるよう十分に説明して」「こだわりが多いので無理に止めるのではなく、うまくかわしていけるような支援を」というような基本的な支援のしかたについての希望が多く聞かれました。また、親なきあとの生活の場として「白い壁の病院みたいなところではなく家の延長にあるような建物で暮らしてほしい」という声もありました。中には「きょうだいに月に1回でも電話をかけさせて」という意見に「わたしも書いておこう!」という同意の声、「明るい色の服を着せて」「体を動かすイベントには誘ってみて」などのピンポイントの希望もあがりました。

『子どもの健康』については緊急時の対応や介護が必要になったときの対応、延命治療や葬儀、お墓まで細分化された問いに答える形式になっており、私たち障害のある子を持つ親がどれだけ先のことまで心配しないといけないのか思い知らされました。将来病気になったときは「病状や治療法を本人にも分かりやすく説明してほしい」、延命についても「十分に説明をして本人の意見も必ず聞いてほしい」など、分からないと周りが判断せず本人への説明と問いかけを望む声が多く上がりました。

記入後、まだ学齢期のお子さんのお母さんは「伝えたいことがこんなにあるのかと驚きました。思っていることを記録しておく大切さを実感しました。」と感想を述べられました。初めての「親心の記録」記入から4年、第2章も何とか終了することができました。

10月の定例会は、自ら娘さんの成年後見人となられたお母様のお話を伺います。どのような経緯でご自分で後見人をしようと思われたのか、どのような業務があるのか、様々なお話を伺いたいと思います。                   10月21日(金)10:00~12:00育成会生活支援センター会議室で行います。ぜひご参加ください

理事長を囲んで

昨年8月、長崎市手をつなぐ育成会の事業内容や活動などを直接当法人の谷理事長にお聞きする定例会を実施し、その際忌憚のないご意見やご質問に対して理事長から回答や説明をいただきました。昨年の理事長を囲む会から一年経過したということと、7月に行われた定期総会で法人の5か年計画にも会員の声を吸い上げる取り組みを要望されるご意見も上がったことから今月の定例会は”2022年版理事長を囲む会”を実施しました。

学齢期のお子さんをお持ちの方からは2022年4月1日に改正された”成人年齢の引き下げ”に伴う金融機関での諸手続きの不安や成年後見制度についての質問が上がりました。谷理事長は現行制度の説明と全国手をつなぐ育成会連合会が参画している厚生労働省主催の「成年後見制度利用促進会議」での久保会長のお話など現在変貌を遂げつつある成年後見制度の現状を説明されました。知的障害のある人にとって利用しにくい側面があるといわれる成年後見制度ですが、全育連をはじめとする障害のある当事者団体の提言を基により使いやすい制度になるよう取り組まれているというお話に質問された方はもとより、他の方々も興味深い内容だけに熱心にお話を聞かれていました。

また知的障害のある方とその親の世代の高齢化に伴ういわゆる”8050問題(80代の高齢の親が50代の障害のある子どもの面倒をみる)”と、障害福祉サービスから介護保険へ制度の移行時期とされる65歳問題についても質問が上がりました。育成会としても長崎市長との懇談会や行政との話し合いで再三一律での切り替えには反対の立場を表明されていて、現在は65歳で切り替えるのは絶対的なものではなくご本人の状況に合わせて判断されるとのお話に安心されたようでした。参加者の皆さんも直接理事長に疑問に思われていることを質問したり、参加者の皆さん同士で話し合い情報を共有することで安心感を得られたようでした。

今回の定例会に参加できなかった方々からはメールで質問をいただいておりますので、理事長に回答いただき、次号の広報あじさいに掲載予定です。今後も一年に一度程度は理事長と会員の皆さんの話し合いの機会を設けていきたいと思います。

次回の定例会は9月22日(木)10:00~ 長崎市育成会大橋事務所会議室にて「親心の記録を書こう(最終回)」です。定例会で取り組んできた親心の記録への記入もいよいよ最後の項目を残すまでとなりました。参加者の皆さんと一緒に話しながら記入することで、色々な発見や見直しができたと好評いただいております。今まで参加されたことが無い方も是非ご参加ください。

 

 

 

定期総会が3年ぶりに開催されました!

コロナ禍で昨年、一昨年度と中止を余儀なくされた長崎市手をつなぐ育成会の定期総会が7月2日(土)3年ぶりに開催されました。しかしまだコロナ感染へ警戒を解くことはできない状況ということもあり、今までの総会の在り方を検討したうえで、参加者が密にならず会話をしないという観点から初めての試みとして上映会を行いました。前半は谷理事長が本年度が第4次5か年計画の最終年度ということを踏まえた挨拶と法人としての取り組みを説明され、続いて寺田事務局長から令和3年度育成会事業報告、令和4年度事業案の報告がありました。

後半は知的障害のある弟さんと兄である「僕」(高木祐透監督)との関りや、家族間の葛藤を描いたドキュメンタリー映画「僕とオトウト」と、監督へのインタビューの上映会をしました。大学進学と共に県外で暮らしている「僕」がオトウトを知るために映画を撮り始め……。ストレートな家族の会話や日々巻き起こる大小さまざまなトラブルに障害のある人と生活されている参加者の方は共感する場面も多かったようで、「僕とオトウト」の世界に引き込まれたようでした。総会終了後のアンケートにも「共感するところが大変多かった」「兄のオトウトさんを理解しようとする姿に感動した」「意思疎通が難しくても対話することの大切さが分かった」などの感想をいただきました。今後、髙木監督が執筆された書籍も発売される予定とのことで、興味を持たれている方も多いようでした。
3年ぶりの開催となった定期総会ですが、以前のような各事業所の利用者の皆さんが参加して賑やかに実施していた総会の形態とは変わりましたが、コロナ禍においての総会の形としては良かったのではないかとのご意見も多くいただきました。全ての行事を中止にするのではなく、感染リスク回避の工夫をしながらできる限り実施できるものは実施してwithコロナの日常を送らなければならないと感じた一日となりました。               (Saya)

「親心の記録」第2章 本人の好きなことは?

6月の定例会はハートセンターに場所を移して開催しました。「親心の記録」第2章も3回目となり、この日は「本人の好きなこと」というページから取り掛かりました。室内での好きな遊び、屋外での好きな場所や遊び、乗り物、そして友だちのことを記入するようになっています。

室内での好きなことはやはりテレビで、ほとんどの方がよく観ているようでした。特定のチャンネルや番組、CMを好んで観る人、録画もする人、テレビの出演者になりきる人など、テレビ大好きな方が多く、タブレットなどでYouTubeをよく観るという方もおられました。しかしテレビ以外となると、ゆるキャラに手紙を書く、メモ帳に落書きして破く、プチプチを潰す、広告紙をびりびりに破くなど、テレビほど時間を割く楽しみは少ないようです。また、テレビをつけていても観るわけではない、ジグソーパズルや写経をさせればするけれど、好きでやるわけではないと、好きなものを見つけてあげられないことを悩んでいる方もいらっしゃいました。

屋外での好きなこととなるとドライブや買い物を答える人が多く、週末は本人が行きたいところに親が連れていくという方は多くいらっしゃいました。しかし親も年を重ね体力的な不安から、この先子どもを連れて出かけられなくなると我が子の楽しみを奪ってしまうのではと心配される方もおられました。親が楽しみを提供できている間はいいのですが、どこかで別の楽しみを見つけてシフトチェンジをする必要があるのかもしれません。一方、自分で調べて予定を立て一人で好きなところに出かけるという方もいらっしゃいました。

「たまにはハートセンターで」という要望に応え、今月はハートセンター会議室で開催

友だちについては、全員が一般的に考える友だちはいないと答え、顔や名前を認識している人はいても、いっしょに出かけたり時間を過ごす相手はいないと言われていました。それでも、話はしなくても同じ場所にいて同じことをしてほしいと言われる方もいらっしゃいました。

今回話題になったのは余暇の過ごし方です。休日や帰宅後何もすることがなく退屈そうという声は複数の参加者から上がりました。知的障害のある人は小さいころから好きなことや楽しみが親任せになりがちです。経験を重ね好きなことが増えていけばいいのですが、障害特性やこだわりもあり、新しいことを受け入れ難い人もいるので、楽しみを見つけるのに苦労します。特に障害が重度なお子さんをお持ちの親御さんは悩みが深く、「よそのお子さんの話を聞いて、うちの子はできないことばかりだと思ってしまった。」と言われていました。また、「重い障害のある人たちが好む遊びや感覚刺激を知るためにも事業所に作業療法士の配置または職員さんに専門的な研修を受けさせてほしいとお願いした。」と言われる参加者もおられ、みなさん異口同音に賛成されていました。

次回は「コミュニケーションや社会性」「移動や外出時に配慮してほしいこと」のページを記入する予定です。続けて参加できなくても大丈夫ですので、ぜひご参加ください。

「長崎よかよか隊」初めての小学校出動!!

新型コロナの感染も収束とまではいかないまでも、やや落ち着きを見せてきた昨今、徐々に以前の日常を取り戻しつつあります。コロナ感染の懸念もあり出動する機会も少なかった「長崎よかよか隊」も少しずつお声掛けいただくようになりました。

長崎県下のすべての公立学校では5月から7月の一週間を”長崎っ子の心を見つめる教育週間”として、それぞれの学校で生徒がいのちの大切さを考える活動を行っています。この期間の研修として今回初めて諌早市の小学校にお声掛けいただきました。小学校の生徒を低学年・高学年に分けて2時間公演させていただきました。初めての小学生を対象とした活動ということで先駆的な啓発キャラバン隊でもあり長崎よかよか隊の師匠でもある”ひろしまあび隊”を参考に、新たに小学校低学年向け・高学年向けプログラムを作成しました。当日は自分と他の人との違いを認め、相手の立場に立って考え行動してほしいとの思いでプログラムを進行しました。参加された小学生の皆さんは質問にも元気に積極的に答えていただき、こちらも楽しくスムーズに進めることができました。

みはる台小学校高学年のみなさん

小学生の時から苦手なことや困難さを抱えて生活している障害のある人へ関心を持ち、理解してもらう取り組みはひいてはいじめをなくす一歩につながるかもしれません。”自分のことも人のことも大切に!”いのちの大切さを考えることにつながる経験になればと願った2時間の活動でした。       (Saya)

「親心の記録」を書いて考えたこと

今月の定例会は前回に引き続き「親心の記録」を記入しました。前回の定例会でも4年前に記入した内容に変更がある方や今回はあまり変更点はなかったけど今後利用するサービスに変化があるかもしれないと話される方がいらっしゃいました。

今回は『日常生活の様子』についてのページを記入しました。食事・入浴・トイレ・着替えなど日常生活における「できることと苦手なこと」「配慮が必要なこと」の項目を記入していきました。4年間で「できること」は増えたという人もいらっしゃいましたが、印象的だったのが「今までできていたことが最近できなくなってきた。」というお話でした。知的障害のある人は障害のない人に比べて老化が早いという話を聞いていましたが、実際生活を共にされている親御さんが身をもって感じられることに同じ知的障害のある子を持つ親として切ない気持ちになりました。”親なきあとのその先”を考え自分が亡くなり将来子どもが亡くなった時のお墓についても考えて、子ども亡き後の墓じまいに向けて具体的に動かれてる方もおられ、大変考えさせられました。また、全介助の子どもの入浴を一人で担われている方は、今は自分が何とかやっているが自分が高齢になってくると一人での入浴介助は厳しくなるので、入所施設の申し込みをしていると話される方もいらっしゃいました。「親心」とは今現在の生活と自分亡き後、そして子どもの将来の生活、そして亡き後まで思いを馳せることかも知れません。参加者の皆さんと話し合いながら、「親心の記録」の記入を進めることも”今”子どもの将来のために親ができることの一つかも知れません。

次回の定例会は久しぶりにハートセンターで行います。6月23日(木)10:00~茂里町2-41 長崎市障害福祉センター(ハートセンター)5階社会適応訓練室 「親心の記録」を書いてみましょう。参加者の皆さんとお話しながら書き進めると新しい気づきや再点検ができるかもしれません。     (Saya)

 

「親心の記録」を書いてみよう❕第2章

4年程前、4回シリーズの定例会で「親なきあと」我が子を支援してくれる人に向けた「親心の記録」を完成させました。自分一人ではなかなか記入が進まないものですが、参加者の皆さんといっしょに雑談を交えながらすると意外とスムーズに書き込むことができました。それから4年、時間の経過で色々と変わったこともあるのではないかと再点検の意味で、もう一度「親心の記録」を書いてみることにしました。

今回は再点検の方より、初めて書きますという方のほうが多く、中には「まだ早いかもしれないけど…」と学齢期の保護者さんも2名参加してくださいました。『緊急連絡先リスト』の項目では、きょうだい、祖父母、叔父叔母、相談支援専門員などが上がりましたが、「自分より年上や同じ世代の人には頼めない」「育成会って書いておけばいい」「育成会の仲間のお母さんの名前書いておこうかな」などの意見が出ました。『パニックやてんかんなどの医療情報』では、『有・無』から選ぶようになっているのですが、「以前はあったけど今はないから無しにした」「今はなくても年取って出るかもしれないので小さい頃の情報として書いた」「過去1回だけの発作も有りになるのかな?」など、単純に有るか無しかでは割り切れないようにでした。

『医療機関』ではかかりつけ医がいないという人もいましたが、ほとんどの方は歯科や内科など通い慣れた病院をお持ちでした。病院通いは小さいころ大変な思いをされた方が多く、苦労話に花が咲きましたが、特に歯科はドクターに噛みついた話や定期健診の時にドクターに注意されるプレッシャーから電動歯ブラシ、歯間ブラシ、フロスなど7種類の道具で磨いているという方もいらっしゃいました。『1週間の生活スタイル』では余暇の過ごし方が話題となり、「自分で自由に遊べるよう、好きなことを見つけてあげたい」「音楽やテレビなど好きなことをして過ごしている」「子どもの行きたいところに付き合って出かける」など様々でしたが、「休みの日は好きな人と電話やメールをしている」という話には「いいね~」という声が多く上がりました。一方「過ごし方がワンパターンになって動かなくなってきている」「コロナになって出かけたがらなくなった」という声も上がりました。また、「以前は仕事は休ませないようにと考えていたが、子どもの年齢も上がり、メンタル面でも浮き沈みがあるので健康第一で考え休みたいときは休んでいいと思うようになった」というお話をされる方もいらっしゃいました。育成会の余暇活動スマイルくらぶや移動支援、グループ支援なども上手に組み合わせながら、休日リフレッシュできるといいねという話になりました。

今回みなさんでおしゃべりしながら4ページを書き進めましたが、前回書いた方の中には「4年の間に情報の修正が必要な個所があったので、これは定期的に見直さないといけない」という声もあり、1回書いたら終わりというものでもないようです。また近いうちに2回目を開催しますので、皆さんご参加ください。

 

 

障害のある人とその親の高齢化~知的・発達障害者の8050~

「少子高齢化」と呼ばれて久しい現代の日本ですが、高齢化の波は知的・発達障害のある人とその家族にも押し寄せています。長崎市手をつなぐ育成会の会員定例会でもたびたび知的障害のある人の「親なきあと」について取り上げていますが、今回は全国手をつなぐ育成会連合会事務局長の又村あおい氏が「障害のある人と家族の高齢化」についてお話されているオンラインセミナーを視聴することにしました。一般的な意味での8050問題(80代の高齢期の親が50代の引きこもりの子どもの面倒を見ること)とは別に、知的・発達障害のある人と家族の特性を背景とした8050問題という切り口のお話は興味深いものでした。社会資源(特に入所施設やグループホームなど)の不足も背景にあり高齢の親が知的・発達障害のある子どもと同居して世話をしている「老障介護」、もう一つは50代の知的・発達障害のある人(中軽度障害に多い)が高齢の親の介護をしている「障老介護」のケースがあると話されました。

また知的障害のある人と親が長く一緒に暮らすと①経済的②介助的③心理的「相互依存」に陥りやすいと分析されていました。しかし反面「障害のある子どもがいるから高齢になっても頑張っていられる。」という参加者の声に共感する部分もあり、親として複雑な気持ちになりました。加えて、障害福祉制度やサービスに大変精通されてる又村氏の知的障害のある人の65歳問題の話では、障害福祉サービスと介護保険サービスの違いや新しく始まった「共生型」サービス、要介護認定など法律や制度に基づいたお話をされ大変勉強になりました。知的・発達障害分野の8050は「出来上がりの絵」であり、そうなる前の6030(親が60代、子どもが30代)のうちに本人のライフステージに寄り添う相談員や支援事業所とつながることが「負のスパイラル」に立ち向かう手段だという説明に相談支援事業所との繋がりの重要性に改めて気づかされました。法律や制度の難しい話も分かりやすく軽妙に解説いただき、参加された会員の皆さんも「今日参加できてよかった。」「とてもわかりやすいお話だった。」と好評でした。知的・発達障害のある人と家族の高齢化の問題は今後も引き続き取り上げていきたいと思いました。                            (Saya)

初めてのオンライン啓発活動

令和4年の年明け早々、第6波となるコロナ感染者増加により長崎県に再度まん延防止措置が発令されました。それに伴い知的障害理解啓発キャラバン隊「長崎よかよか隊」に講演依頼をお受けしていた5つの研修会が残念ながら延期や中止となりました。その中で長崎県作業療法士会様からご依頼されていた研修会は、参加者の皆さんと対面しない完全オンラインの形で開催されるとのことでした。しかも作業療法士の方が研修される学会の中の一コマ(70分)を特別企画として「長崎よかよか隊」に講演してほしいというご依頼でした。本来参加者の皆さんに疑似体験をしていただき、知的障害のある人の生きづらさや障害特性を知っていただく形なのに、オンラインの形態で実施した場合、果たしてどうやって疑似体験してもらうのか?そもそもZOOMでこちら側から発信することなど可能なのだろうか?と、数々の悩みと不安がありました。しかし出来るだけ対面で行うプログラムに近い形を目指し、修正や新たな工夫を加え作成しました。

 

学会当日は途中で送信が途切れて最後まで出来なかったらどうしよう、音声の切り替えをスムーズにできるだろうかなど不安材料は挙げればきりがありませんでしたが、何とか70分の持ち時間を無事終了することができました。今回初めてのオンラインでの啓発活動となりましたが、大変貴重な経験ができたと思います。お声掛けいただいた長崎県作業療法士会様には度重なる打ち合わせや学会当日のフォローなど大変お世話になり感謝申し上げます。コロナ禍の現在、知的障害の理解を広く社会に啓発するための活動を実施するのに困難な時代ではありますが、今回の経験をもとにオンラインでの啓発活動も進めていけたらと思います。