障害のある人とその親の高齢化~知的・発達障害者の8050~

「少子高齢化」と呼ばれて久しい現代の日本ですが、高齢化の波は知的・発達障害のある人とその家族にも押し寄せています。長崎市手をつなぐ育成会の会員定例会でもたびたび知的障害のある人の「親なきあと」について取り上げていますが、今回は全国手をつなぐ育成会連合会事務局長の又村あおい氏が「障害のある人と家族の高齢化」についてお話されているオンラインセミナーを視聴することにしました。一般的な意味での8050問題(80代の高齢期の親が50代の引きこもりの子どもの面倒を見ること)とは別に、知的・発達障害のある人と家族の特性を背景とした8050問題という切り口のお話は興味深いものでした。社会資源(特に入所施設やグループホームなど)の不足も背景にあり高齢の親が知的・発達障害のある子どもと同居して世話をしている「老障介護」、もう一つは50代の知的・発達障害のある人(中軽度障害に多い)が高齢の親の介護をしている「障老介護」のケースがあると話されました。

また知的障害のある人と親が長く一緒に暮らすと①経済的②介助的③心理的「相互依存」に陥りやすいと分析されていました。しかし反面「障害のある子どもがいるから高齢になっても頑張っていられる。」という参加者の声に共感する部分もあり、親として複雑な気持ちになりました。加えて、障害福祉制度やサービスに大変精通されてる又村氏の知的障害のある人の65歳問題の話では、障害福祉サービスと介護保険サービスの違いや新しく始まった「共生型」サービス、要介護認定など法律や制度に基づいたお話をされ大変勉強になりました。知的・発達障害分野の8050は「出来上がりの絵」であり、そうなる前の6030(親が60代、子どもが30代)のうちに本人のライフステージに寄り添う相談員や支援事業所とつながることが「負のスパイラル」に立ち向かう手段だという説明に相談支援事業所との繋がりの重要性に改めて気づかされました。法律や制度の難しい話も分かりやすく軽妙に解説いただき、参加された会員の皆さんも「今日参加できてよかった。」「とてもわかりやすいお話だった。」と好評でした。知的・発達障害のある人と家族の高齢化の問題は今後も引き続き取り上げていきたいと思いました。                            (Saya)

初めてのオンライン啓発活動

令和4年の年明け早々、第6波となるコロナ感染者増加により長崎県に再度まん延防止措置が発令されました。それに伴い知的障害理解啓発キャラバン隊「長崎よかよか隊」に講演依頼をお受けしていた5つの研修会が残念ながら延期や中止となりました。その中で長崎県作業療法士会様からご依頼されていた研修会は、参加者の皆さんと対面しない完全オンラインの形で開催されるとのことでした。しかも作業療法士の方が研修される学会の中の一コマ(70分)を特別企画として「長崎よかよか隊」に講演してほしいというご依頼でした。本来参加者の皆さんに疑似体験をしていただき、知的障害のある人の生きづらさや障害特性を知っていただく形なのに、オンラインの形態で実施した場合、果たしてどうやって疑似体験してもらうのか?そもそもZOOMでこちら側から発信することなど可能なのだろうか?と、数々の悩みと不安がありました。しかし出来るだけ対面で行うプログラムに近い形を目指し、修正や新たな工夫を加え作成しました。

 

学会当日は途中で送信が途切れて最後まで出来なかったらどうしよう、音声の切り替えをスムーズにできるだろうかなど不安材料は挙げればきりがありませんでしたが、何とか70分の持ち時間を無事終了することができました。今回初めてのオンラインでの啓発活動となりましたが、大変貴重な経験ができたと思います。お声掛けいただいた長崎県作業療法士会様には度重なる打ち合わせや学会当日のフォローなど大変お世話になり感謝申し上げます。コロナ禍の現在、知的障害の理解を広く社会に啓発するための活動を実施するのに困難な時代ではありますが、今回の経験をもとにオンラインでの啓発活動も進めていけたらと思います。