「イヤ」って言ってみる?!

  先日、障がいのある人を対象とした「知る見るプログラム(ファシリテーター養成講座)」の研修に山口県まで行かせていただく機会がありました。長崎市育成会より4名の本人さんが参加され、他県の本人さんたちと交流しながら、様々なワークショップを楽しんで体験されていました。 雄弁に語る人、ちょっと恥ずかしそうな人、考えながら話す人、様々でしたが、みなさん自分のスタイルで発言され、感心しました。

 障がいのある人に対し「行く?行かない?」とか「どれにする?」ということは聞いても、「あなたはどう思う?」とか、「なぜそう思うの?」など、本人の想いや考えを問うことは意外と少ないかもしれません。想いを語るという体験が大切だなと思いました。

 強く印象に残ったのは、「子供の頃は食べるものや着るものを親に決められていて、それは仕方ないと思っていた。でも、大人になったので、今は自分で決められるし、イヤだと言えます!」という本人さんの発言でした。親や支援者は、本人が嫌だと言わないのをいいことに、安全や安心のために良かれと思って、手出しや口出しをしてしまいます。しかし、それは障がいのある人たちの望むことでしょうか?「嫌だと言わない」のではなく「嫌だと言えない」だけなのかもしれません。

 タイムケアでも人との関わり方の中で、明らかに嫌がっている場面であってもそれを口に出せない子がいます。「イヤ」って言っていいんだよと伝えても、なかなか難しいようです。ワークの中には「イヤって言ってみよう」というプログラムも用意されています。つい、こうするんだよと口だけで伝えようとしてしまいがちですが、実際に場面を想定してワークショップをしたりロールプレイングをすることで、発信力を磨くという方法もあるんだと、ほんとうに勉強になりました。今後、支援にも活かしていきたいと思います!

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新しいステージへ

 今年もまた、新年度を迎えました。

 進級、進学の時期となり、新しい学校や教室、新しい先生や友だちと、新しいもの尽くしで、なかなか落ち着かないものです。新しい環境に馴染むには時間がかかるものですが、障がいがあればなおさらです。タイムケアでも、今までできていたことができなくなったり、精神的に不安定になったりと、新しい環境に戸惑う様子がはっきりと表れるお子さんもいらっしゃいます。

 見ているこちらも辛くなることもありますが、いつまでも親や支援者が環境の変化から守ってあげられるわけではありません。私たちにできることは、新しい場所や人との出会いを提供し、たくさんの体験を通してこれから先も必ず訪れるであろう環境の変化に慣れていってもらう支援をしていくことだと思います。。

この3月に、タイムケアを利用していた高校3年生の子どもたちとスタッフに来てくれていた大学生たちが社会に巣立って行きました。「○○に通います!」と報告してくれる子どもたちと、「○○に就職します!」と報告してくれる大学生たち、どちらも大きな希望にちょっぴりの不安をプラスし、輝くような笑顔には、なんの違いもありませんでした。

お母さんスタッフ一同、次のステージへと進んだみんながまぶしくて、そして誇らしくもある春でした。

今日は、春休みの活動を中心にご報告します。

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リフレーミング!

 新年のご挨拶をしてから、すっかり間が空いてしまいました。月2回の更新を心密かに誓っていたのに、早くも自滅…。ちょっと落ち込んでしまった私は、先日行われた育成会の職員研修会で「リフレーミング」という言葉に出会い、気持ちを切り替えることができました。枠という意味のフレームという言葉はご存知かと思いますが、「枠組みをし直す」つまり「見方を変える」ということだそうです。

 人は誰でも、長所と短所を持っているものですが、短所の部分に目を向けて全体像を決めてしまい、「あの人はイヤな人だ。」とか「感じの悪い人だ。」などと思ってはいないでしょうか?見方を変えれば(リフレーミングすれば)チャンスが生まれるということで、日常使いそうな否定的な表現を言い換える練習をしました。  「落ち着きがない(多動)」→「好奇心旺盛」とか「活動的」、「何度言っても分からない」→「信念がある」、「しつこい」→「粘り強い」、「だらしない」→「おおらか」など。

 リフレーミングしてその人を見れば、また違った印象を受けるのではないでしょうか?タイムケアの活動の中でさまざまな子どもたちの態度や反応から、スタッフもいろんな印象を持ちますが、それが短所と思えるようなものであっても、見方を変えて、伸ばしていけるような長所に変わればいいなと思いました。

では、今年に入ってからの活動をご紹介します。

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新年のごあいさつ

 明けまして おめでとうございます。

 昨年一年間、長崎市手をつなぐ育成会のタイムケア チャレンジクラブ”フレンズ”をご利用いただきありがとうございました。

 障がいのある子どもを持つ親の会である育成会のタイムケアは、いろんな場所に出かけていったり、家庭ではなかなかできないことに挑戦する「体験」と学校や年齢を超えての「仲間作り」、そして「マナーやルールの習得」を柱に、親目線の様々な活動を行っています。

 本年も、スタッフ一同、たくさんの子どもたちが笑顔になれるタイムケアを目指し、なおかつ安全でご家族のみなさんが安心できる活動を行っていきます。たくさんのみなさんのご参加をお待ちしていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

                                                                                                                        ≪タイムケア事務局≫

障がいがあるがゆえに…

 先日、ハートセンターの20周年記念式典で掛屋剛志さんのミニコンサートがありました。

全国ネットのTVにも出演されるほどの有名人ですが、なぜだかこれまで縁がなく、今回初めてピアノと歌を聴かせていただきました。視力障害と知的障害など重複した障がいがある掛屋さんですが、そんなことはみじんも感じさせない歌と演奏で、聴いている私たちに感動を与えてくれました。聴きながら、ハンカチで目頭を押さえる人もいて(私もその一人)、ほんとうに素晴らしかったです。「心の琴線に触れる」という言葉がありますが、まさにそんな感覚でした。

小さい頃から床や段ボールなど指で叩いて音を出すのが大好きだったそうで、指にはたこができ、それがつぶれて出血することもあったそうです。ともすれば、「うるさいから止めなさい。」とか「痛いから止めなさい。」とか、制限してしまいそうですが、本人が好きなことだから…と、見守って、才能が開花するのをサポートされたご両親も素晴らしいですね。

「障がいがあるのに、あんなにできるとか、頑張っている。」というものではなく、「障がいがあるがゆえに輝いている。」という印象でした。障がいがあっても誰かを喜ばせたり、感動させたりできるはずですよね。 自分の好きな事で、自分自身とその周りの人たちを幸せに出来るってステキなことだと思いました。

タイムケアを利用してくれている子どもたちも、活動を通して得意なことや好きなことを増やしてくれることを願っています。  

さて、今日は10月~11月の活動(ちょっと古いですねcoldsweats01 )からピックアップしてご報告します。

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愚かなことをする権利?!

 先日、会議の資料として「知的障害を持つ人の権利擁護」という読み物が配布されました。その中に「間違える権利」「愚かなことをする権利」という表現があり、とても引きつけられました。

 最近よく耳にする「自己決定」という言葉。自分らしい人生を送るためには、自分のことを自分で決めるのは大切です。しかし、本人が決めた事が適切でないこともあります。その読み物には、「そうであったとしても、危険や他者に損害を与える場合を除き、間違える権利や愚かなことをする権利も当然認められるべき」と書かれていました。「なぜなら、人は試行錯誤をして成長する存在だから…。」

 親や支援者は、自己決定が難しい障がいのある人の代弁者となって、よかれと思って自己決定に手を貸そうとします。そこには「失敗しないように…」とか「恥をかかないように…」という思いが介在していますが、本人はその失敗や恥ずかしさなんて、さほど恐れていないのかもしれませんね。むしろ、周囲の「失敗したらいけない」という価値観が優先された決定になってはいないでしょうか。

 育成会タイムケアでは、活動の中でお弁当やジュースを選ぶという簡単な自己決定から、調理ではどの仕事を担当したいか、自由時間に何をして遊びたいかなど、何かを決める機会をたくさん用意しています。もちろん、全ての場面で全てのお子さんが意思表示をするわけではありませんので、そのあたりの能力開発支援についてはまだまだ勉強が必要です。

 これからも、たくさんの経験を通して自己決定ができる力をつけられるように、お手伝いをしていきたいと思います。

 今回は9月末から10月中旬の活動の様子をご報告します。

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「自分らしく生きる」って…?

 「自分らしく生きる」ってどういうことでしょうか?

 自分が「自分らしく生きてるか?」と問われても、どうだろうかと頭を抱えてしまいます。ましてや、自分で決める事ができにくい障がいのある人にはもっと難しい事でしょう。

「何を食べたいか?」、「何を着たいか?」、「誰と出かけたいか」、「どこに住みたいか」、「お給料や年金で何を買いたいか」 どれくらいの事を自分で決めているかが、またはどれだけたくさんの選択肢を与えられるかが、自分らしく生きてるかどうかに繋がるのではないかな~と思っています。

ある日、あるお母さんが「今度、子どもがもっと周囲に受け入れてもらいやすいように、薬を試すことにしました。」 というお話をされました。そのお子さんは、自傷や他傷行為があり、そのことでお母さんもたいへん心を痛められており、少し眠気を催し大人しくなるようにと、服薬を決心されたようでした。

「そうすることで、子どもも抑制されたり、叱られたりすることも減るし、周囲の人にも受け入れられやすくなり、結果としては本人にとってもいいと思うんです。」というお話しを聞き、「それはご本人が望む事でしょうか?」と問いかけながらも、お母さんにとっても苦渋の選択だったのだろうと、やるせない気持ちになりました。

「その人らしく生きるためには、本人の事は本人に決めてもらう。」と、分かってはいてもどうにもならないこともあるのかもしれません。でも、受け入れやすいとか受け入れにくいとか、支援者の都合でその人を見ることは、障がいのある人やその家族に寄り添っていると言えるでしょうか。障がいのある人たちをサポートする立場としては、ありのままのその人を受け入れられるように、支援する側が利用者に合わせていけるようなスキルを待たないといけないと思いました。

では今回は9月前半の活動からご紹介します。

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これでいいのだ!

先月、九州地区育成会の鹿児島大会に参加してきました。

その中で「ゲニー工房」という就労継続支援B型事業所を大分で運営されている、小児精神科医の釘宮誠司さんの講演を聴く機会がありました。主に発達障害の人たちの支援をされており、講演の内容も自閉症・アスペルガー・AD/HDを発達三兄弟と称して、それぞれの特性や関わり方、新しい取り組みなど、ユーモアたっぷりに話されました。

釘宮さんがご自分の病院で行っている認知行動療法的アプローチを紹介されたのですが、その中にライフステージに応じた支援というのがありました。0~2才(おっぱい飲み込み期)、2~9才(遊び込み期)、10~18才(覚え込み期)、19才以上(磨き込み期)という4つのステージに分かれていて、タイムケア世代の遊び込み期、覚え込み期の子ども達に必要な支援とは「集団の中で遊びを教える支援」「集団で遊ぶことの楽しさを教える支援」そして「こだわりへの介入」「興味の発見、専門性の追求」「特性を発見し、育てるスクーリング」だそうです。集団は同級生ではなく異年齢がいいそうですよ。

特に、小学校高学年から高校までの覚え込み期の子どもたちは、ルールや習慣、言葉、コミュニケーション能力など、社会生活に必要なことを覚え込み、自発的に動き「自信を持つ」ことが大事ということでした。聴いていて、「これって育成会のタイムケアにも当てはまる!」と興奮してしまいました。

支援には自由と構造化が大事という事でしたので、これについては、まだまだ勉強していかなければなりません。しかし、年齢も学校も違う子ども達が集まって、楽しく遊び、マナーやルールを身につけながら、さまざまな体験をして自信を付けていくという点で、「うん!このやり方でいい!」と鹿児島の地で勇気をいただいた私でした。confident

今回は夏休み後半の活動からご紹介します。

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褒めて伸ばす!

今年の夏も暑いですね。でも、子どもたちはほんとうに元気です。  移動や買いものなど、建物から一歩出るとすごい熱気に包まれて、「ふう~」とため息が出るスタッフに対し、文句も言わずに平然と荷物を持って歩く子どもたちには、ほんとに頭が下がります。

さて、今月のタイムケア事業の目標(育成会では、全事業所がそれぞれ毎月職員の目標を立てています)は「いいところを見つけてほめよう」です。まだ社会のルールやマナーが身についていない部分が多い学齢期の子どもたちには、「…したらダメだよ。」と注意することも多いのですが、出来そうにない事をできた時は、もちろん褒めますよね。  でも、出来て当たり前の事は特別ほめたりしないで見過ごしてしまいがちです。

そこで、あえて「いいところを見つけて」なのです。バスや電車の中で静かにできないお子さんが、静かにできたら、「すごいね。がんばって我慢したね。」と言いますが、いつも静かにできているお子さんにも、「いつも、マナーがいいね。」と褒めてあげるとか、暑い中、歩いた後は、「よく、暑いのに頑張ったね。」 、お弁当を完食したら、「きれいに食べたね。」というように、ひとりひとりのいいところを見つけて褒めるようにしようというのが、タイムケアの目標です。

褒められる事で、子どもたちは自信を持ちますし、褒められている人は周囲の子どもたちの模範になります。

チャレンジクラブ“フレンズ”の子どもたちが、褒められる事でもっともっと成長してほしいという願いも込めた目標です。

では夏休み前半の活動をご紹介します。

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雨ニモマケズ、紫外線ニモマケズ…

 育成会のタイムケアでは、子どもたちにたくさんの体験をしてもらうため、外へ出かける活動を重視しています。

活動の内容は、月1回のスタッフミーティングで決めるのですが、去年の計画を参考に、観光ガイドブックはもちろん、ネットでイベント情報を収集し、長崎市の広報あじさい、新聞やTVなど、ヒントになりそうなありとあらゆるものを総動員して、知恵を絞って絞って…でも、最後は絞っても何も出なくなり、「う~ん…」と、頭を抱えて沈黙think と、このような状態が毎月繰り返されています。特に6月から夏休み前までの梅雨時と、夏休み中の活動計画の作成は、雨rainと暑さsunとの闘いです。屋根があるところ、涼しいところ、疲れない活動を…ということで、屋外の活動はほとんどできません。かと言って、室内ばっかりというわけにもいきません。雨と暑さ(お母さんスタッフには紫外線!)は、タイムケアの大敵なんですcoldsweats02sweat01 

 今回もいろんなことを考慮しながら、子どもたちが安全に、楽しんで過ごせるように、そして仲間と一緒にたくさんの経験ができるような夏休みの計画を作成しました。 子どもたちが興味を持ちそうなことを考えて決めてはいるのですが、「うちの子、料理はできません。」「うちの子、エアロビはやりません。」などと、まだまだ満足いただけていない方もいらっしゃることでしょう。でも、1つ言えることは、やった事無いことには関心は持てません。面白いか、面白くないか、自分に向いてるか、向いてないかを知る機会をもつことも大事かもしれませんね。

実際、全く興味を示さなかったお子さんが、繰り返すことで、できるようになったということはよくあります。先ずはチャレンジsign03

ということで、育成会のタイムケアは チャレンジクラブ ”フレンズ”っていうんですよ~happy01 

さて、今回は「美術館&ハートセンター」「諫早青少年自然の家」「県民の森」をご紹介します。

                            

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